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【土屋一昭】森の演出家が語る、大自然の魅力と恐ろしさ
今回は、今大注目の「森の演出家」土屋一昭さんにインタビューさせていただきました!森を知り尽くす土屋さんに、人間と森の関係、魅力と怖さについて語っていただきました。
—森の演出家とは、どんなお仕事ですか?
食育、森育、人育というのをテーマに環境学習の場を提供しています。僕の地元・青梅市からすぐのところにある奥多摩には、東京の94%の森林があり、イノシシや鹿、熊もいます。
—熊って東京にもいるんですね!
そうなんですよ。私の畑も最近、イノシシにやられました。笑
—あらら!環境学習って具体的にどんなことをするんですか?
深呼吸から始まる五感体験をしていただき、人が生まれつき持っていながらも、普段の忙しさから忘れてしまっているもの・ことを蘇らせます。
—そんなに変わるものなんですか?
ものすごく変わります。まず、目つきが変わります。とある学校で、学級崩壊が起こっており、課外授業の講師として呼んでいただいたことがあるんですが、それまで全く人の話を聞かなかった生徒達が、僕が30分話しただけで、目つきが変わり、人の言うことを聞くようになったんです。
—へ〜!不思議!どうしてですか!?
今は、先生が怒れない時代なんです。生徒達は、先生を○○ちゃん扱いしたりと、自分達と同じレベルだと思って接して来るんです。でも、大自然の中では、リーダーの言うことを聞かないと、命取りになります。「お前らそれじゃ生きていけないんだそ」「生きるか死ぬかだぞ」ということを、最初からはっきりと子供達に伝えます。自然がどれほど怖いものかということを分からせる必要があるんです。
また、山道では「言うこと聞かなかったら、置いて帰る」「先生より先に行ったら、無条件で帰らせる」ということを言っています。なぜなら、自然は本当に危ないから。
—なるほど。そうですね。
それを体罰やモラハラだと言う人もいるかもしれませんが、何が危ないのか分かっていないことの方が、よっぽど危ないんです。僕は、何が、どのように危ないのかをきちんと子供達に示す必要があると思っています。
—危機管理意識を植え付けるために、あえて危険に触れさせるんですね。
はい。今の子は、あらゆることを「危ないから」と言う理由で、大人に「やってはいけない」と言われてるんです。でも、それだと、子供達は、思考停止していまい、何がどう危ないのかを考えなくなってしまいます。僕も小さい頃、先生に「川には行っちゃダメ」と言われていました。でも、父は「行っていいよ」と言ってくれたんです。父は、川の豊かさを知っていたから。もし、それで、危険な目にあったら、自分の責任だと。
—子供であっても、自分に責任がある。それがお父様の教育方針だったんですね。
今は、親も自然をあまり体験したことがないケースが多いので、親御さんにもその重要性を伝えていきたいと思っています。
—森って、土屋さんにとって、どんな存在ですか?
心であり、命であり、親です。と同時に、時には、鬼になって人を殺すこともある恐ろしいものです。
—なるほど。土屋さんは、面白い肩書きをお持ちですよね。「東京最後の野生児」は、インパクト大ですね!(笑)
そうなんですよ。以前、取材を受けた時に、ある方がつけて下さったんですが、本音を言うと、東京最後にしちゃダメなんですよ(笑)次世代に受け次がないと!
—確かに(笑)「森の演出家」というのも素敵な肩書きですね!
これも、取材に来ていただいたあるアナウンサーの方が名付けて下さったんです。ちなみに、商標登録しました!
—野生児が商標登録するんですね!(笑)
たまに、そんなこともします(笑)一応、スマホとパソコンも使えますよ(笑)
—話変わりますけど、このハーブティーおいしいですね!
自分の畑から採ってきたハーブで、6種類のハーブをブレンドしているんです。他にも、野菜を栽培してます。最近は、イノシシにほとんどやられてしまいましたが(笑)この前、猿にも取られました。必死に追いかけたんですが、ダメでした。
—取られてばっかじゃないですか!(笑)イメージですけど、土屋さん、朝起きるの早そう!
イメージ通り、5時起きです(笑)基本、早寝早起きですね。
—情熱溢れる土屋さんですが、今の土屋さんを作っている過去の出来事、経験は何かありますか?
僕、30代までダメダメ人間で、色んな仕事やってみたんですが、上手くいかなかったんです。手に職をつけようと思って、調理師になるために、都会に出たんですが、生活に馴染めず、くたびれてしまったんです。もともと野生児で、大自然に戻れば元気になると分かっていたので、2009年に森林セラピーガイドという資格を奥多摩認定第一号として取得しました。
—おお!すごい!第一号ですか!?
はい。2011年の震災が起きてからは、やはり大好きな自然を本業にしたいと強く思い、その年の夏に、被災地の子供たちを受け入れてキャンプをしたりと、それを機に、一気に活動を始めました。
—お客さんは、どんな層の方が多いですか?
本当に幅広いですね。10代〜80代の方までいらっしゃいます。最近は、鬱の方が多いので、都会からサラリーマンの方々が気軽に来て、元気になってもらって帰ってもらいたいです。
—これ、皆さんに聞いているんですが、土屋さんのアイデンティティーを形成する要素は何ですか?聞かなくても、答えが予測できそうですが(笑)
予想していただいている通り、森ですね(笑)自分が好きなものをお客さんにも体感していただき、元気になって帰っていただく。それこそが自分のミッションだと思っています。
<土屋一昭/Kazuaki Tsuchiya>
幼少期より豊かな自然に囲まれ育ち、「ヤマメを素手で採る野生児」として数多くのメディアに取上げられ話題になった。社会に出てからは都内のそば店に勤務しながら、愛する奥多摩や青梅で釣りガイドなど行っていたが、自然と人との距離、現代の食との係わり合いに疑問を抱き、自然の魅力を訴える業へ転進した。2011年、東京都青梅市の御岳にある築150年の古民家を拠点に「森の演出家」の第一人者としての事業を開始。古き良き日本文化と自然体験を行うサービスを提供してきた。自然と共に生きる彼の姿は話題となり、現在はTVや雑誌などのメディア出演や大使館・自治体からの依頼で全国各地を飛び回っている。2013年より「森育」「食育」「人育」をテーマにした森の演出家事業の本格的な準備に入り、その動向に各界から注目を集めている。
photo by 吁九志