【猪熊真理子】女性オピニオンリーダーが語る「あなたの役割は何ですか?」

猪熊真理子
IMG_7562今回は、昨年リクルートを退社し、設立1周年を迎えるOMOYA代表取締役社長・猪熊真理子さんにインタビューさせていただきました。社会問題に真っ向から立ち向かう、女性オピニオンリーダーの素顔に迫ります!


猪熊真理子

—OMOYAではどんなことをされているんですか?

OMOYA Inc. は、昨年3月に設立した会社で、来月で1年になります。「あなたの想いが道になる」というコンセプトのもと、4つの事業を展開しています。

経営コンサルティング・ブランドコンサルティング事業、企画・マーケティング事業、女性の活躍支援・推進事業、文化人マネージメント事業です。

経営コンサルティング・ブランドコンサルティング事業では、事業や商品・サービスに込められた想いを、消費者や生活者の皆様に分かりやすく伝え、消費者心理を理解し、事業をさらに成長させていくお手伝いをさせて頂きます。企画・マーケティング事業では、最近、「ウーマノミクスマーケティング」という言葉を新しく提唱しています。

日本は古くから「女性がお財布を握っている」とよく言われますが(笑)、消費者としての女性を分析し、それを商品やサービスに反映させていくマーケティング手法です。

猪熊真理子

—なるほど。面白いですね!

女性の活躍支援・推進事業では、女性活躍や女性管理職を増やしたいとお考えの企業様にコンサルとして入ることもありますし、自社事業としては、女性プロデューサー事業や社会人女性の学びの場「女子未来大学」を運営しています。

私は大学時代から、女性の自信形成に興味があったため、「女性の力を社会に」という想いのもと、自分に自信の持てない女性たちを支援する事業を行っています。文化人マネージメント事業は、2015年から始まった事業で、「人がより良く生きる、より豊かに生きるために。」というテーマを掲げているのですが、私は、これからの未来では大きなパラダイムシフトが起こると考えています。

—どんなパラダイムシフトですか?

今までの資本主義の時代は崩壊しつつあり、物質的な豊かさから精神的な豊かさに社会や世界全体がシフトしつつあると思うんです。そのパラダイムシフトの中で、日本は重要な役割を担うと思っています。

その中でも、イノベーター(革新者)は、特に重要な役割を果たします。例えば、科学の世界では、新しい発見がどんどん生まれているのに、それが社会では、まだまだ生かされていないことがたくさんあります。このイノベーターの皆さんを文化人としてお迎えし、彼らの成果・ノウハウを科学的・文化的な角度から、社会に対して還元していく取り組みを始めたいと思っています。

女性活躍の分野でも、価値観の違う男性と女性が円滑なコミュニケーションをとり、相互理解をしやすくするメソッドなども開発しています。

猪熊真理子—へ〜!興味深いです!!猪熊さんが、起業しようと思ったきっかけは何ですか?

私は、もともと学生時代から、漠然と「自分は、いつか経営者になるんだろうな」と思っていたんですね。

新卒でリクルートに入社し、経営戦略を策定したり、何十億、何百億が動く事業企画の経験をさせて頂いたり、CMを作り、何千万人という人を動かしたり。そういった貴重な経験の中で「社会と人を動かす」ということを学ばせてもらいました。

その中で、自分自身が役に立てることはなんだろうと思うようになり、自分なりに考えた結果、「消費者とビジネスサイドの通訳になる」ことだと思うようになりました。

—ほぉ。通訳。

潜在的なニーズを汲み取ってそれを事業に転換したり、企業側が伝えたい想いを消費者に分かりやすい、伝わるメッセージを発信していく。それが、自分の役割だと自覚するようになりました。

猪熊真理子

—仕事をする上で、大事にしていることは何ですか?

一つは、「常に期待以上に返すこと」ですね。一緒にお仕事をしていただけるということは、私たちに何かしら期待してくれているということなので、期待を超えようとすることは、常に意識しています。

あとは、人として誠実であること。損得感情や利害関係ではなく、この人の役に立ちたいと思えるかどうか、その観点でしか仕事はしないですね。それと同時に、自分と社員の成長も大切にしています。自分たちが成長することによって、結果的にたくさんの方のお役に立てるようになると信じているので、自分と社員の成長もモチベーションの一つですね。

−素敵ですね。OMOYAのコンセプト「あなたの想いが道になる」には、どのような想いを込めていますか?

私たちは多様な価値観の中の多様な幸せを大事にしたいと思っています。日本では、どうしても教科書通りの「幸せ」を決めてしまいがちなところがあり、教科書通りの「幸せ」を歩んでいない人々は、勝手に世間の目からは幸せじゃないと決めつけられることもありますよね。

本当は多様な幸せの価値観があって、その価値観に優劣なんかないと思うんです。でも、「幸せとはこういうもの」と教えられてきた日本人は、自分が当たり前とは違う価値観を持っていてもそれを信じるのが怖いんです。そこをちゃんと支援することで、自分の価値観や幸せに誠実に歩めるような社会にしたいと思っています。

—なるほど。同感です。

私は、全ての人に役割があると思っているんです。例えば儚い命にも、ホームレスの方々にも、影響力のある方にも、全ての役割に優劣はないんです。問題は、その役割をどう実現するかなんです。

猪熊真理子

—OMOYAのコンセプト、とても共感します。特に「自らの原点を理解し」という部分が個人的にすごく好きです。belongも自分をよく理解することが重要だと考えているのですが、猪熊さんの原点は何でしょうか?

小学生の時から、「人はなぜ生きるのか?」ということを考えて生きてきました。私はどうして生きているんだろう?人は、生きることの答えを見つけられるのかな?とか。

—すごい子供ですね!(笑)

でも、私にとっては、それが当たり前すぎて、みんなそんなことを考えながら生きていると思っていたんです(笑)

—そんな壮大なテーマについて考える子供は、なかなかいないと思います(笑)

時間がただ流れていく毎日ではなく、「本当の意味で生きる」、「自分の役割を感じながら生きる」ということを早いうちから、意識するようになりました。

あとは家族の存在です。私がいう家族とは、両親・祖父母だけでなく、もっと広い意味での家族です。先祖代々の家族も、血の繋がらない家族みたいな友人も含めた人たちです。私が弱い部分やどうしようもない部分を見せても、「しょうがないな」と笑ってくれる友人や、風邪を引いた時には、おかゆを作ってくれるだろうなと思える友人など、無条件に愛し、許してくれる家族のような人たちの輪は年々広がっています。

猪熊真理子

—OMOYAでは、「生み出す力」について、触れられていますが、猪熊さんが今まで「生み出す」過程で難しかったこと、大変だったことはありますか?

何かを始めようと思ってから、形にするまで、「想いを持ち続けられるか」が一番大変なことだと思います。形にするまで、自分の中で、何度も問いかけるんです。本当にやりたいの?誰に伝えたいの?それをやる価値はあるの?って。やらない理由なんていくらでも出てきます。多くの人は、アイディアはあるけど、やろうとしない人が多いなと思います。「できない」って簡単に思えるくらいのことなら、やらないほうがマシだと思っています。

—ううう。今、ギクッとしました(笑)ごもっともですね。

どんなに形にするのが、難しくても、それでも心の底からやりたいと思えるのなら、やればいいと思うんです。

—OMOYAの2015年のテーマは、「人がより良く生きる、より豊かに生きるために。」とありますが、今年はどんなことに挑戦していきたいですか?

本当の豊かさとは何か?ということを社会に問いながら、事業展開をしていきたいと思っています。例えば、女子未来大学では、「お金があることだけが幸せか?」「身をすり減らしながら働くことが幸せか?」「本当の絆とはどんなものか?」など、色んなことを女性たちに問いかけながら一緒に豊かさについて考えていきたいと思っています。

また、働き方の構造にも変革が必要だと思っています。日本人は、働き過ぎです。男女ともに働き方を変えなければいけないと感じています。
猪熊真理子

—確かにそうですね。

特に、日本人男性は働き過ぎといわれますが、これからは育児や介護、病気などの様々な事情により、「仕事を中心」に暮らせない人も増えてくると思います。例えば女性が子育てなどで時短勤務になると、労働時間を減らした途端、仕事を中心に暮らしている人達とはギャップが生まれますよね。重要なのは、この「ギャップ」を減らすことなんです。働く人たちの労働時間を減らしつつ、でも生産性を上げる。

最近は、ワークライフバランスという言葉が頻繁に聞かれますが、それも同様で、人々がどう工夫して、効率的・生産的に経済を回していけるか、そのことによってダイバーシティーを促進できるかいうことに着目しなければいけないと思うんです。社会構造の変化に、意識構造がついていってないんです。

—猪熊さんのアイデンティティーを形成する要素は何ですか?

私は、人が自らの役割を果たすのに必要なものは全てすでに家族から与えられていると思っています。役割を果たすための頭、能力、外見、コミュニケーションスキルなどいろんなものを含めて、必要な素材はもう十分にもらっているんです。あとは、それを自分が生かせるかどうかなんだと思うんです。生かすも殺すも自分次第です。

なので、「もっと身長が高ければ」「もっと可愛かったら」等、自分に足りないものに目を向けるんではなくて、家族からもらった「自分」というギフトをどう生かすか、どうやってその役割を果たしていくかに全力を注ぐことが重要なんだと思います。なので、私は、関わってくれた全ての人から影響を受けていて、その出会いが私自身を作ってくれていると思っています。

—鳥肌が立ちました。必要なものは、もう全て与えられている…そう思うと、やる気が湧いてきますね!お伺いしたいことが多くて、時間が足りないですが、最後に、まりこさんの今後の夢を、是非とも聞かせて下さい!

死ぬ間際30秒前に、私に出会えて良かったと思ってくれる人の笑顔が走馬灯のように、ばーっと浮かぶことですね。あとは、私がいなくても、女性が豊かに自由に生きることや、社会にプラスの力を与え続けられる仕組みを残して死にたいと思っています。女子未来大学や自事業などの取り組みも、自分がいなくては回らない仕組みではなく、自分がいなくても回る仕組みにして受け継いでいけたらいいなと考えています。

猪熊真理子

<​​猪熊 真理子/Mariko Inokuma>
OMOYA Inc. 代表取締役社長

東京女子大学文理学部心理学科卒業。学生時代に女性の自信形成に興味を持ち、心理学を学ぶ。2007年(株)リクルートに入社。ブライダル情報誌「ゼクシィ」で編集や企画の経験を積み、美容サロン検索・予約サイト「Hot Pepper Beauty」で事業戦略、ブランドプロモーション戦略、マーケティングなどに携わる。2011年から「女性が豊かに自由に生きていくこと」をコンセプトに、心理学・美容・ファッションなどの観点から商品やサービスの企画・PR・女性支援などを行い、Fashion&Beauty Bloggerとしても活動。2014年2月にリクルートを退職し、3月に株式会社OMOYAを設立。
また、一般社団法人 全日本伝統文化後継者育成支援協会の役員として、日本伝統文化を今の時代のライフスタイルに合わせて再提案し、日本伝統文化の本質的な価値を次世代へと繋いでいくプロジェクトを進行中。

Photo by 濱田裕平

1989年生まれ。北京大学国際関係学部卒業。株式会社Selan代表。インタビューサイト "belong" を運営。