【Unal3姉妹】トルコ×中国 ―北京大学で学ぶ3姉妹が大切にしている「父からの言葉」

Unal sisters 2

<Derya/Deniz/Filiz – Unal Sisters>

IMG_7562トルコ×中国のハーフで、日本、中国、トルコで多文化に触れながら幼少〜学生時代を過ごし、現在は、北京大学大学院に在籍しているデリヤさん(長女)、デニスさんとフィリスさん(次女・三女で双子)3姉妹を取材させていただきました!


— どんな幼少期だったんですか?

デニス:生まれてから、中国で幼少期を過ごし、デリヤが5歳、私たちが4歳の時にみんなで日本に移りました。その時、私たちの母語は中国語で、みんな日本語が全くできなかったため、とても苦労しました。フィリスと私は、国語の授業の時は、国際学習室という、外国の子供が行くクラスに移動して、授業を受けていました。

フィリス:そのあと、私たちが中学2年生、お姉ちゃんが3年生の時に、トルコの中高に2年間留学しました。

トルコと日本の学校は、どんな違いがありましたか?

デニス:トルコの授業中は、先生より、生徒の方が話します。例えば、歴史の授業では、まず、学生たちに予習してきた内容を話させるんです。生徒は、授業に対して、すごく熱心で、先生が質問すると、みんな勢い良く手を挙げて、先生に指される前に、答えを言っちゃうんです。とにかく、自己アピールがすごいんですよ。

フィリス:日本だと、「勉強してないのがかっこいい」という風潮がありますよね。よく、テスト前に、「どうしよう!2時間しか勉強してないよ〜!」と言いながら、90点取る人いますよね(笑)
トルコでは、テスト前、「ちゃんと勉強した?」って聞いたら、必ず「すごい勉強したから、テスト絶対大丈夫だと思う!」という答えが返ってきます。でも結果は40点、みたいな(笑)それで、「どうして私が40点なんですか?」って先生に抗議しいくんです(笑)

デニス:あと、びっくりしたのが、高校入試の受験会場では、飲食オッケーなんですよ。なぜかというと、緊張したり、お腹が空くと、試験に集中できないから(笑)なので、私もレーズン一袋をパクパク食べならが受験しました。ハンバーガー食べながら解いている人もいましたよ!(笑)

日本でのカルチャーショックはありましたか?

フィリス:幼稚園の頃は、自分が外国人だと言う意識は全くなく、クラスに外国人がいたら、「あ、外国人だって」思っていました(笑)小学校に上がってから、自分たちの考え方は周りとちょっと違うなって思い始めたんです。それから、周りを見て、合わせなきゃって思うようになりました。

デニス:小学校の給食の時、全員揃って「いただきます」って言ってから食べ始めるということを知らず、いつも先に食べ始めちゃって、よく怒られていました(笑)私も、それから、周りをよく観察するようになりました。

デリヤ:私は、中学に入って、タメ語で話していたら、ある日、先輩に呼び出されて、「あんた、なんでそういう話し方なの?」って怒られたんです。「そういう話し方って、どういう話し方?」って聞いちゃいました。中学に入ったら、先輩には、敬語を使わなきゃいけないということを知りませんでした。小学校では仲良くタメ語で話していたのに、中学に入ったらいきなり敬語なんて不思議!(笑)

Unal sisters3

自由に育ったんですね(笑)ご両親の影響が大きいですか?

デリヤ:小さい頃、イスタンブールから近くの島にお父さんと船で旅をしたことがあるんですが、その時に言われた言葉を今でも鮮明に覚えています。

「人生は一度きりだから、自分の心に忠実に、行動しなさい」

私は、父の言う通り、心の赴くままに行動してきたので、自分の人生を誇りに思っています。

デニス:何か相談すると、「自分が本当にしたいんだったら、やってみなさい」といつも背中を押してくれます。父に「ダメだ」と言われた記憶は一度もありません。

素敵なお父さんですね!

デニス:トルコは家庭を非常に大切にする国で、あまり子供を留学させたがらないんですが、それでも父は、私たちを他の国に送ってくれました。父は、自分のお父さんに、自分のやりたいことを反対されてできなかったため、自分の子供達には、絶対夢を叶えてほしい、子供のしたいようにさせてあげたいという想いがあるんです。

どうして中国の大学に進学しようと思ったんですか?

フィリス:母の勧めで、中国での進学を考えるようになりました。母が中国人なので、自分たちのアイデンティティーからしても、中国で吸収できることは多いと思いました。

 

実際に、中国の大学に進学して、どうでしたか?

デニス:中国は、外国人にとってとても暮らしやすい国だと思います。もともと国内に多様な民族が共存しているし、中国人は気を使わない国民性なので、外国人に対しても壁をあまり作らないんです。

フィリス:あと中国は、学生が学生らしい暮らしをしていると思います。 日本にいた時は、あまり勉強中心の生活ではなく、常に、テストのための勉強だった気がします。カラオケとか、プリクラとか、中国より学生が楽しめる娯楽が多いからかもしれませんが…
中国に来て初めて、勉強は覚えるためでなく、自分のためのなんだなと身をもって実感しました。

Unal sisters4

日本に違和感を感じるところはありますか?

フィリス:全体的に、外国人に対して、距離感があると思います。自分たちが作り上げた“常識”とか“空気”が自分たちを縛りつけている感じがします。個性的な人はいっぱいいるのに、個性を潰してしまうのは、本当にもったいないことだと思います。

デニス:あとは、物事をはっきりと言わない人が多いので、本当は何を考えているのが、分からなくなる時があります。きっと、みんな周囲を気にしすぎて、周りにあわせよう合わせようとしているのかもしれません。

デリヤ:私、中学生1年生の時に、当時通っていた日本の学校で、3年生の先輩がいじめられているのを見たんです。私たちは、違うのが当たり前、むしろ同じである方がおかしい、というような環境で育ったので、「変わっている人は淘汰すべきだ、みんな同じであるべきだ」という考え方が根本にある、いじめは、どうしても許せなくて、その場で、いじめている先輩に向かって、「何やってんの?頭おかしいじゃないの?」って言っちゃいました(笑)

— 勇敢ですね!(笑)怖くなかったんですか?

デリヤ:全然!そもそも、上下関係という概念がなかったので、怖いなんて思いませんでした。それに、その数日後の帰り道、いじめられていた先輩に、「ありがとうね」って言われて、自分は間違っていないって改めて実感しました。

自分達のアイデンティティーを形成する大きな要素は、なんだと思いますか?

デリヤ:姉妹だと思います。初めて、トルコに行った時、私たちが日本から来たということもあって、周囲のトルコ人がみんな私たちのことを日本人だと勘違いしていました。でも、「自分たちは、中国とトルコのハーフなのに、なんで日本人って言われるんだろう」と疑問に思い、自分たちのルーツを誤解されて悲しい気持ちになっていることに気づいたんです。その時から、自分たちのアイデンティティーを意識するようになりました。

フィリス:実は、大学一年生の時、自分は、どこにいても外国人として扱われ、居場所がないように感じた時期がありました。トルコ国籍を持っているため、大学ではトルコ人として見られるけど、トルコにいた期間は、日本、中国よりも短かったので。でも、今は、「中国もトルコも二つとも自分の国」だと思えるようになりました。

Unal sisiters

多様なアイデンティティーを持っていて、ラッキーだったなと思ったことはありますか?

フィリス:どんな価値観、考え方でも受け入れられることですかね。あんまり、こういう人は苦手、仲良くなれないっていうような、偏見を持っていないのは、とてもラッキーなことだと思います。

今後の夢を、ぜひとも教えてください。

フィリス:今、大学院で、外国人に中国語を教えるための教員コースにいるので、先生になることはもちろん視野に入れています。その一方で、一般企業に入って、社会の仕組みも学びたいと思っています。そして、いつか、語学学校を作りたいです。

デリヤ:私はフィリスに、その独特の考え方と「空気が読めない」性格を、個性として生かせる職に就いてほしいけどな(笑)私は、国家間の違いばかりに注目せず、その根本にある問題をしっかりと伝えられる人になりたいです。ハーフの子供達がもっと自分のアイデンティティーに自信と誇りを持てるような手助けをしたいです。

デニス:具体的には、まだ決まってないんですが、色んなことに挑戦して、自分が一生懸命になれる仕事を見つけたいと思っています。

デリヤ:私たちは、小さい頃から、「誰の道は、自分で切り開くものだ。それが成功であって、一番の幸せだ」と教わってきました。これからも、父の言葉通り、自分たちが夢中になれることを、探していきたいと思っています。

順に、デリヤ(姉)、デニス(双子・次女)、フィリス(双子・三女)

Derya

Deniz

filiz

 

1989年生まれ。北京大学国際関係学部卒業。株式会社Selan代表。インタビューサイト "belong" を運営。