【石田言行】非日常体験を当たり前に!旅行サービスの新時代を切り開く異端児

石田言行
樋口亜希
今回は、旅行サービスの新時代を切り開くtrippiece・CEO、石田言行さんにインタビューさせていただきました。「言行(いあん)」という名前に込められた想いを胸に、世の中に新しい価値を生み出す石田さんにお話をお伺いしました!


幼少期、大嫌いだった自分の名前

 

—幼少期は、どんなお子さんでしたか?

僕の言行(いあん)という名前は珍しいので、いじめられていました。小さい頃って、珍しいということだけで、いじめの対象になるんですよね。正直、僕は気が強くなかったので、いじめにあって、泣き寝入りするタイプでした。その時は、自分の名前の由来や意味については知らなくて、ぼんやりと、親父からインターナショナルに通用する名前だということだけ聞いていました。

—そうだったんですね。素敵なお名前なのに!

別に小さい頃って、国際的なみたいな要素必要ないじゃないですか。昔は、ただ嫌なだけでしたね。

石田言行

 

 

学生時代の体験が原点に!「この指止まれ!式」旅行サービス

 

—今、どんな事業をされていますか?

皆で旅をつくるサービスを展開しています。シェアトリップとも言うんですが、趣味や興味の合う人たちで旅をしようというテーマのもと、旅行サービスを提供しています。基本的に、ユーザーの方に、旅の企画を作っていただいて、そこに集まった仲間たちで旅をするというコンテンツです。

—それは、ツアーを作って人を集めてから、旅行会社に企画ごと持って行くということですよね?

そうです。

—今までで楽しかったツアーや旅の一番の思い出は?

ウユニ湖ですね。trippiece<トリッピース>は会社として、まだまだですけど、会社がここまで成長できた最初のきっかけになったツアーですかね。初めての企画でしたし。約2週間、南米という日本とは真反対の土地に、絶景を見に行くというのはすごく良い経験でしたね。

−trippieceの良さ、楽しさを身を持って体験したユーザーの中には、仲間に入りたいという方もいるんじゃないですか?

そうですね。ジョインしたいと言ってくださる方は結構います。でも、すごく優遇するというわけではありません。

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—この事業を始めようと思ったきっかけはなんでしょうか?

一つだけではないので、難しいですね。まず、もともと起業をしたいという欲求はありました。大学の一年の頃から、「うのあんいっち」という別の学生団体をやっていたんですね。「うのあんいっち」は世界中の子供達に写真を撮ってもらって、それを発信する活動をする団体です。その写真に興味を持ってくれた人にイベントに来てもらったり、ツアーでNPOやNGOが主催するツアーに行ってもらったり、僕らがオリジナルでつくったツアーに行ってもらったりしました。

ある時、自分のTwitterで「バングラデシュにいって見たい人!」って募ったんですよ。まず数人から反応があって、彼らと一緒にツアーを作って、結果18人で行くことになったんです。trippieceは、その原体験がきっかけになっているんです。その体験が、ただ、純粋に面白かったんです。

—なるほど。面白いですね!自分が面白い!と思っても、自分の中で完結する人も結構多いと思うんですよ。他の人を巻き込んで、「世の中にサービスを提供したい!」と思ったのはなぜですか?

中三の頃、初めて自分でお金をつくる経験をしたんですよ。サイトを作ったり、ドロップシッピングをしたり。まぁ色々やってみたんです。その時、別にお金が欲しいとかじゃなくて、自分で何か作って、価値を提供した結果として、お金が返ってくる。なんだか、それがすごく楽しかった。その経験が起業意欲に影響していると思います。

あとは、僕が高校一年生の時に、ホリエモンさんがブームになって、メディアに露出されるようになって、言っていることが本質的だし、強い憧れを覚えました。特に、自分がやりたいことを貫く姿勢ですね。

石田言行

 

人のせいにする時間があったら、それを取り戻す

 

—昔から、ゼロから何かを立ち上げるのがお好きだったんですね!起業をして学んだ一番大きなものはなんですか?

僕は、起業していない自分が分からないから、物事を相対的に見れないので、何とも言えないところなんですが、良いか悪いかは別として、すべてが自分次第だということですね。例えば、社員が何かミスをしたり、自分の業務外で何かミスが発生した時でも、全てが会社の代表である僕のミスなんですよね。起業する前までは、ミスしても言い訳できたし、別に自分が動かなくても、どうにでもなっちゃう世の中だったんですよね。

今は、自分がどうにかしなければ会社は潰れるし、人のせいにしている時間があったら、それを取り戻す作業をした方が良いと思っています。起業家として、すごくやりがいを感じているし、できなかったこと、できたことすべて含めて自信になっています。まぁ、逆に自信をなくす時もあるんですが(笑)でも、その積み重ねが、なんだか人生ぽくって良いなっていう風に思いますね。

 

「ベンチャーは、最速で走っていかないといけない」起業家としての挑戦

 

—起業する上で、一番大変だったことや難しかったことはありますか?

全てが難しいんですね(笑)一番か〜、う〜ん。一番大事で、一番難しいと思うのは、自分をコントロールすることだと思います。組織運営もすごく大変なんですけど、それは、先輩たちが残してくれた手法論があるので、僕はあまり上手くないですが、その枠組みにはめていけば、できなくはないと思っています。

一方で、自分のコントロールの仕方は、あまりないんですよね。「起業すると大変じゃない時期はない」と、書いてあるのを何かの本で見たことがあるんですが、自分が起業して、身に染みて分かりました。まぁ、当たり前ですけど。本当に問題が起きない日はないし、ベンチャーは、最速で走っていかないといけないので、自分の気持ちと精神を保っていくことの重要さを痛感しています。

—自分との戦いですね。

はい。それは健康も含めて、自分をコントロールするということに関して、自分はまだ出来ていないし、難しいなと思います。今年も帯状疱疹という、背中がしびれる症状が出てしまいました。僕はどちらかというと抱え込んで、一気に発散するあまり良くないタイプなんですよ。少しずつ発散していくのが本当は良いとは思うんですが。

事業に関していうと、「タイミングやチャンスを逃さないこと」「諦めないこと」に尽きると思います。あとは、事業の本質をついてやっていれば、最悪のケースには陥らないと思っています。そのために、最高のパフォーマンスを発揮できる状態をまず自分で作っていくことが大事なのかなと思います。

—何か工夫していることはありますか?

それが、あんまり工夫していないんですよ。だから駄目なんですけどね(笑)いや、分かってはいても、他のことに意識がいってしまうんですよね。これがまだ経営者として未熟なところだと思っています。課題は沢山あるし、自分の時間と頭のキャパシティーも限られているので、もっと集中しないといけないと思って、今すごく反省しています。やっぱり組織の方を優先してしまい、自分のことは二の次になっちゃいますね。

でも、僕は、たまには心の休息が必要だと思うので、運動したり、たまに海外に行ってゆっくりしながら仕事したり。どうしても、対外的見え方や社内からの見え方を気にしてしまうんですが、結局気にしすぎて、自分が壊れてしまうのが一番良くないので、そこは割り切るべきだと最近感じています。

石田言行 

 「非日常体験」を当たり前にできる環境を

 

—先日、タイに行ってらっしゃいましたよね!

はい、昨日、プーケットから帰ってきたばかりなんですが、現地でハーフマラソンに参加してきました。正直、マラソンって疲れるだけだし、大嫌いなんですが(笑)、でもマラソンって「歩いたら負けだ」とか、「この辛さを乗り超えよう」という、自分と戦いなんですよね。今回は、プーケットがあまりにも暑く、命の危険を感じたため、歩きましたが(笑)

—そうなんですね(笑)私もマラソン嫌い!石田さんは、自分を追い込むのが好きなんですね(笑)

追い込んで、弱い自分に勝っていかないと自信が生まれないと思うんですよ。

 

—今の石田さんに大きく影響している、過去のご経験、出来事はありますか?

僕、昔バドミントンをやっていたんですが、途中で辞めたんです。男子の部員がいなくて、一緒にやっていく仲間がいなくなってしまったんです。trippieceは、ある意味、仲間を集めて、コミュニティーを作っていくサービスなんですが、バドミントンを辞めざるを得なかった経験から、仲間がいないがために、やりたいことができないというのはものすごく寂しいことだと実感しました。

自分の趣味や、挑戦してみたいことがあるのに、やれないという状況をなくし、もっとエンターテインメントや非日常体験を当たり前にできる環境を提供したいと思っています。

—ご自身を一番突き動かしているものは何ですか?

一番は自己評価だと思いますね。小さい頃、いじめられた経験のせいか、未だに自分が弱いと自分では認識しています。一方で、理想としては強く、かっこよくありたいし、自分が自分を認められるようになりたいです。基本的には常にそれとの戦いですね。


石田言行

「言行一致」というアイデンティティー

 

—石田さんの、アイデンティティーを形成する要素は、なんだと思いますか?

そうだなぁ…。う〜ん。名前がやはり一番の要素かもしれません。実は、今度、自分の名前の由来である「言行一致」というタイトルで、本を出します。

—わー!おめでとうございます!!

すごく恥ずかしいです(笑)小さい頃、いじめられて、自信なくして、それが嫌で、大学一年から色んな活動を始めました。今は、それこそ海外の方と接する機会も多いので、やっと「言行(いあん)」という名前が、英語圏の人も発音しやすく、国際的に通じるという意味が分かりました。「言葉」と「行動」という、意味と想いのある名前を付けてもらっているので、今は全然恥ずかしくないし、とても誇りに思います。

あと、父方の家庭が超体育会系で、「前進なくして進歩なし、命をかければ何でもできる。」という言葉が、父からの手紙に書いてあったんですね(笑)

—武士ですね(笑)

はい(笑)「できないというのはお前の努力が足りないということだ!」と言われたり、もう根性論バリバリの父親でした。なので、それも僕のアイデンティティーを作っている要素かもしれません。

—今後のビジョンを是非とも教えてほしいです!

まず、会社のミッションは「好きで隔たりのない世界を作る」。これは「趣味や興味で世界を繋げていこうよ」という意味です。僕個人の夢としては、潜水艦を作りたいんです。

—潜水艦! あの海の中に沈んでいるのですよね?(笑)どうしてですか?

はい。ただただ「海が好き」それだけです。ダイビングも好きですし、海の生き物を見るのも好きなんです。海には、見たことのない世界や可能性が秘められています。しかも、その海は、宇宙よりも身近で、世界中に広がっている。海は、ほとんどの人が行ったことがあると思うんですよ。ジャングルなどの陸地は、結構すでに分かってきていることが多いと思うんですが、深海は、まだまだ謎が多く、僕はとても魅力を感じます。

「trippiece」には、Trip(旅行)×piece(かけら)で、旅を通して、かけらを繋いでいくという想いが込められています。pieceはひとつひとつの企画、人を意味していて、僕たちがその繋がりを作るきっかけになれば良いなと思っています。

石田言行<石田言行/Ian Ishida>

東京都調布市生まれ。大学1年時に、子どもたちが撮った写真を通して国際協力を支援する学生団体うのあんいっち(20101月、特定非営利活動法人化)を立ち上げ活動を展開する。活動の一貫として、旅行会社や参加希望者とスタディツアーを共同企画・実施。3カ国に約60名の集客をする。その経験をもとに、20113月、株式会社trippieceを設立。ユーザー数19万人、旅行者約3万人の旅行コミュニティに育てる。ラオスで象使いになる旅や、ウユニ塩湖に行く旅などオリジナリティある旅行サービスとして注目を浴び、テレビやラジオ、新聞などのメディアに多数掲載されている。

1989年生まれ。北京大学国際関係学部卒業。株式会社Selan代表。インタビューサイト "belong" を運営。